2020.02.29
2020年2月8日(土)東京大学弥生講堂で開催された、第131回日本心身医学会関東地方会で『医療連携オンラインカウンセリングの経験と今後の可能性』としてセラピラシスのプレミアムコースをご担当いただいている土居照代先生、酒匂努先生にご発表いただきました。
その中で、専門性の高いオンラインカウンセリングは引きこもりの方・引きこもりのご家族の方にとって役に立つサービスになるのではないかと、ご出席の先生方からご意見をいただきました。
本記事では、『引きこもり』と一括りにされている方々は多種多様であること、オンラインカウンセリングはどんな方のお役に立てるのか?について取り上げてみたいと思います。
このような方に向けて書いています
今回は、ご本人ではなく、引きこもりで悩んでいるご家族の方に向けて、情報発信させていただきたいと思います。
目次
内閣府が2018年に40~64歳の中高年層を対象に実施した「生活状況に関する調査」で、引きこもり状態にある人が全国で61万3000人いるとの推計結果が出ました。
2015年度に実施した15~39歳を対象にした調査では54万1000人が引きこもりと推計されています。
調査時期や手法は異なるものの、国内の引きこもりは100万人規模に達している可能性があります。
このまま増え続けると、今後引きこもりは1,000万人を超える可能性があると指摘する専門家もいます。
日本の人口は1億2,601万人(令和2年2月1日現在 総務省概算値)ですので、1,000万人を超えるとなると、日本人の約8%ほどが引きこもりとなる可能性があるということ。
その根拠として
以上のように言われています。
これだけ人数も多くなってくると『引きこもり』と言っても、本当に色々なケースがあって、問題解決の方法も様々になってくることが想像できます。
1.引きこもりの母集団としてもともと多い不登校。不登校からの引きこもり
2.最近増加している母集団は退職者。シニア層の引きこもり
3.「家事手伝い」など現実の問題として顕在化しにくい女性の引きこもり
相談件数として多いものでも、このように様々ですが
各家庭、状況はバラバラ。同じことをしたら解決できる!というものでもないのが現状です。
家族ができる取り組みとして、まず重要と言われているのは「対話」です。
しかしそれが難しいケースも多いかもしれません。
全然部屋から出て来ない、何日も顔を見ていない、そういう場合「対話」が大事と言われても無理…そんな風にあきらめてしまっているご家族も多いのだとか。
その場合はまず挨拶から始めることが勧められています。
それでは、挨拶にはどんな効果があるのでしょうか?
まず、挨拶で交わすのことばの語源を調べてみると
こんにちは(今日は)
今日はご機嫌いかがですか。今日はよいお天気ですね。
などと日中話しかけていたものが、後半省略されたもの。
もともとは、話しかけの言葉だったものです。
おはよう(お早う)
朝、自分より先に出てきていた人に対して、後から来た人が「お早いですね(お元気でなによりです)という意味を込めて声をかけていたもの。
このように、挨拶は誰でもできる、そして肯定的なメッセージが込められた言葉。
毎日挨拶の言葉を投げかけるというところから、対話に向かって第一歩を踏み出してみるのも良いのではないでしょうか。
カウンセリングというと、どうしても問題を抱えている本人が受けなくてはならないもので、引きこもっているので外出は難しいし、無理…とあきらめているご家族も多いようです。
しかし、実際、カウンセリングは本人が受けなくても良いのです。
カウンセリングのメリットは以下の2点です。
家族の中の誰か一人が変わること、それが大きな意味を持ちます。家族システム論などに基づいた家族カウンセリング、家族療法も『引きこもり』のお悩みに対して有効です。
◆カウンセリングで『引きこもり』問題例が解決に向かった例
【相談者:長女が引きこもりで悩んでいた女性】
20代の長女は、都内の大学卒業後、企業に就職したのですが、1年あまりで退職。東京で一人暮らしをしていましたが、横浜郊外の実家に戻ってきました。
最初はネットで検索して就職活動をしている様子もありましたが、3ヶ月くらいで出かけなくなり、一日中部屋にこもってSNSやゲームなどをするようになってしまいました。
今、社会で言われているようなブラック企業に勤めたことで、精神的にも疲れているのかと思い、少し休ませようと様子をみていたのですが、1年が経過しても変わる様子はなく、一日中インターネット、ゲーム、昼夜逆転もしているようで、朝ごはんでも、部屋から出て来なくなってしまいました。
これは引きこもりなのかもしれない…と本当に心配になり、色々と調べ、相談窓口や家族会などとも連絡をとってみたりしました。
何も解決しないまま、引きこもってから3年になろうとしていた頃…
以前から興味を持っていた専門家のカウンセリングを受けてみることにしました。
ふり返ってみると、数年、家から一歩も出られない日がずっと続いている状況でした。
この状況を何とかしたくて、母として、継続的に専門のカウンセリングを受け、専門家の支えのもと長女を見守るという決断をしました。
定期的にカウンセリングを受けるうちに、不安が和らぐと同時に、長女に対する気持ちが変わってきました。
たとえ長女が家から出なくても『私の大切な娘』という思いが日に日に強くなってゆきました。
気持ちが変わると、自然に行動にも色々な変化が現れるようになっていきました。
一緒に暮らす、父親や妹にもその様子が伝わったのか、父親と妹の態度も、私がカウンセリングを受けるようになってから、長女に対して優しくなったような気がしました。
ある日、長女が、アルバイトの面接に行く!と急に外に出かけて行きました。
突然のことでびっくりしましたが、これをきっかけに近所の喫茶店でアルバイトを始め、今は毎日楽しそうに出かけて行きます。
時々アルバイト先の愚痴をこぼしたりもしていますが、見違えるようです。
今は、コーヒー豆の勉強をしたりしていて、家でもおいしいコーヒーを淹れてくれます。
本人がカウンセリングを受けないと解決しないのではないか?
母親がカウンセリングを受けて変わるのか?と
相談に行く前は専門家の先生といっても半信半疑でしたが、結果的に家族全体が変化し、長女の引きこもりも解決してしまいました。
今は、家族一人が変わることの大切さ、その意味を感じています。
家族カウンセリング、スクールカウンセリングを数多く担当されている専門家の先生からも、家族を支えることの効果は大きいというお声を聞きます。
実際には、カウンセリングによって、このような変化があるのですね。
前回のコラム『オンラインカウンセリングで良くなる人はどんな人? オンラインカウンセリングで変わる人の特徴』で実際、現場のカウンセラーの先生にお聞きしてみると、以下のような方はカウンセリングの効果が高い傾向があります。
引きこもりのお悩みでは、引きこもっているご本人も当然悩まれていますが、カウンセリングに対するモチベーションはどうでしょうか。
ご本人よりもご両親の方がカウンセリングに興味がある、現状を変えたいと思っており、モチベーションが高いというご家族もとても多い印象です。
□カウンセリングで何とかしたい、今の状況を変えたいと思っている
□こんなことで今、困っています!悩んでいます!と訴えることができる
□カウンセリングが何となく気になっている…
一つでも☑なら、お父様、お母様がカウンセリングを受けるという選択肢も大いに考えられます。
また、最近では、ご両親ではなくご兄弟がカウンセリングを受けるというケースもあります。
カウンセリングをご家族の『誰か』が受け始めることで、家族だけで抱えることなくみんなが楽になり、活き活きと生活できるようになるというメリットがあります。
オンラインカウンセリングは、引きこもり問題のご相談にどのようにお役に立つことができるのでしょうか。
オンラインカウンセリングならではのメリットをご紹介します。
オンラインカウンセリングを開始した時点で、相談者が家の中に入っているも同然。専門家が家庭訪問をしているという状況をつくることができます。
お困りのことをお話しいただきながら、カウンセリングで使用するパソコンやスマホを持ち歩き、家の中の様子を教えてもらうことも可能です。
対面カウンセリングでなかなか実施が難しいのが家族カウンセリング。
家族が平日の昼間に休みを取ったり、スケジュールを合わせてカウンセリングルームや病院、クリニックに行くのは負担がかかります。
夜間や休日、早朝など、家族が負担なくスケジュールを合わせられるオンラインカウンセリングなら、家族カウンセリングも無理なく受けることができます。
海外赴任中のお父さんでも、カウンセリングに同席していただくということもできますね。
ご本人がカウンセリングに興味を持ち、やってみたいと思われても、予約や手続きで受けるまでに時間が空いてしまうのが対面カウンセリングの困ったこところでした。
オンラインカウンセリングなら、当日、カウンセリング中に加わってもらうことだって可能です。
話すと長くなってしまいがち…
まとまらなくて上手く説明できない…
というお悩みも時々聞かれますが、オンラインカウンセリングにはメールやチャットで相談できるコースもあります。
引きこもりの方の中には、話すよりも、書いた方が気持ちが整理できる、自分の困りごとを表現できるという方も多いようです。
その場合はビデオ通話や音声通話よりも、メール、チャットのコースがオススメです。
毎日何となく慌ただしく、予約を取るとなるとちょっと…
という場合はメール相談がオススメです。
じっくりと書いたメールに対して、専門家から返信をもらう
その返信は何度も読み返すことができる
そんなメリットもあります。
引きこもりでお困りの方の中には、医療的な介入が必要な方もいらっしゃいます。
最近話題として取り上げられることが多くなりましたが、発達障害などもその一つ。
早期に医療が関わった方が、早く問題解決に向かいやすいということもあります。
もしかして鬱?躁鬱?
何か病気が関係しているのでは…
そんな風に心配になることもあるかもしれません。
それなのに引きこもりでなかなか受診できない。
そんな時、医療現場での経験豊富な公認心理師がまずは担当させていただきます。
「セラピラシス」には、現在15名の専門的な資格を有する心理士・医師・歯科医師がカウンセラー登録しています。
どの先生も、様々な臨床経験があり、さらに学会発表をされたり、著書があったり、専門性が高く、勉強家な先生ばかりです。
会員登録すると、それぞれの先生の経歴、日々更新されてゆく実績を確認することができます。会員登録は下記ボタンからできます。
2020年2月25日現在、セラピラシスでは、ビデオ通話、通話、メールでのカウンセリングが881回を超えました。
開設から3年目になり、カウンセリングが終結となり、寛解に至った患者さんも増えてきました。
臨床経験豊富なプロのカウンセラーの先生が、家族カウンセリングも積極的に行っており、必要に応じて医療と連携しながらお一人お一人に合ったカウンセリングをご提供しています。
今までにないオンラインカウンセリングを。
ご本人だけではなく、ご家族が受けることでも解決に向かう可能性が高い『引きこもり』のご相談。
まだ専門家のカウンセリングを受けたことがないという方に、専門のカウンセリングとはどんなものかを知ってほしいという思いでカウンセリングサービスを展開しています。