2019.11.29
2015年12月から、従業員が50人以上の事業所で毎年1回実施することが義務化となったストレスチェック制度。
ストレスチェックの結果、「高ストレス者」と選定された労働者から申し出があった場合は、医師による面接指導を実施することも事業者の義務です。
高ストレス者と選定され、専門家の面談をすすめられたけれど、何も行っていないという人が全体の61.6%を占めているというデータがあります。
このストレスチェック、会社の義務で行われていますが、一体どんな意味があるのでしょうか。
厚生労働省の命令で意味はないけど嫌々やらされている?
会社がブラックで訴えられた時のための言い訳?
いいえ、そんなことはありません。
このコラムを書いている私は、2015年のストレスチェックが義務化される時に、従業員数約3,200人、事業所の従業員が100人以上という職場で組合の役員をしており、ストレスチェックについて本社から丁寧に説明してもらいました。
結構良い制度だなと思ったのですが、ちゃんと説明されていないと、誤解している方も多いようで、ネットで「ストレスチェック制度は意味がない」と批判されることもしばしば。
このような方に向けて書いています
目次
なぜストレスチェックをするのでしょうか。その意味を確認してみましょう。
自分のストレス状態には、意外と気が付かないということがあります。ストレスチェック制度は、溜めすぎたストレスにいち早く気づくための方法の一つです。
自分は大丈夫!と思っていたのに、意外と『高ストレス』だったなどということも…。
ストレスチェック制度は、「医師、カウンセラーに相談する頃にはもう重症で…」などという状況を防止するために、早めの相談のきっかけの一つです。
『高ストレス』の場合、会社に申し出ることで、
などの措置をしてもらえます。ストレスチェック制度は、このようにうつなどのメンタルヘルス不調を未然に防止するための役割があります。
ただ、会社側はストレスチェックの結果を企業が知る事は禁じられているため、社員本人が申し出ない限り実施不可能です。
社員のストレスチェック結果は、本人だけに通知され、企業が知る事はできません。
質問票は医師(またはその補助をする実施事務従事者)が回収、評価し第三者、人事権を持つ職員が内容を閲覧することは固く禁止されています。
身体の健康診断は通知されますが、ストレスチェックの結果を知る事ができるのは自分だけなのです。
ストレスチェック制度は、あくまで現在のストレス状態に気付くためのツールで、会社はその機会を提供しているにすぎません。
ここでこう答えたらストレスが高いと判断されて、出世に響くかも…
そういう心配は一切必要ありません。
自分の状態を知るためのものですので、検査の回答でウソをつくというのは、検査する時間と手間の無駄になってしまいます。
せっかくの機会、正直に回答して、自分のストレスがどのくらいか確認してみましょう。
会社に申し出ることで、医師の面談を受けることができます。
高ストレス者と選定された当人からの申し出があるまで、企業はその人が高ストレス状態かどうかを知る事ができません。
高ストレスの通知が来たのに、会社は何もしてくれない…というのは当たり前のことです。高ストレスで会社に何か対処してほしいと思ったら、申出が必要です。
医師は面談後に就業上、業務を軽くする、労働時間を短縮するなどの措置が必要かなどを企業に意見することになっています。
ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計、分析、その結果を提供してもらい、職場環境の改善を行うことが、会社の努力義務とされています。
集団規模が10人未満の場合は、個人特定されるおそれがあるので、全員の同意がない限り、結果の提供を受けることは禁止されています。
これは努力義務となっていて、実際に行うかどうかは会社次第ですが、ストレスの多い職場の環境を早期に改善し、働きやすい職場にしてゆこうという目的で行われることがあります。
この分析で個人を特定することはありません。
『高ストレス』を会社に申し出て、大事な仕事を任されなくなったらどうしよう…
会社の評価に響いたらどうしよう…
申し出の前までは、会社には知られない『高ストレス』
でも、申し出てしまったら、みんなに知られてしまうのでは?評価に響くのでは?と心配される方もいらっしゃるようです。
しかし、そのような心配はご不要です。
なぜならば、高ストレスを理由として
を事業主が雇用者に対して行うことは禁止されているからです。これを「不利益者取扱いの防止」と呼びます。
事業者が以下の行為を行うことは禁止されています。
① 次のことを理由に労働者に対して不利益な取扱いを行うこと
・ 医師による面接指導を受けたい旨の申し出を行ったこと
・ ストレスチェックを受けないこと
・ ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しないこと
・ 医師による面接指導の申し出を行わないこと
② 面接指導の結果を理由として、解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うこと
もし『高ストレス』を申し出たことで不利益な扱いを受けるようなことがあれば大問題。
評価に響くということもあり得ません。
『高ストレス』で医師の面談を受けることは社員の『権利』です。
『高ストレス』なのは今だけ、休みを取って寝ればスッキリするはず、このハードなプロジェクトを乗り越えたら旅行にでも行ってリフレッシュすれば大丈夫…
そうやってごまかしながら仕事を続けている。
しかし、本当に大丈夫なのでしょうか。
対処できないほどのストレスや、長期間続いて慢性化したストレスは危険な病気の元です。
以下は、ストレスが関係しているとされている疾患です。
1のような身体症状がなくても、安心できません。
特に、以下のような症状が2週間以上続く場合には、「うつ病」が疑われます。早めに専門家に相談しましょう。
その他、ストレスが原因となる不調は、うつ病以外にも、様々な形で表れることが分かっています。
大事な会議やアポイントを忘れてすっぽかしてしまった。
仕事で自動車を運転して事故を起こしてしまった。
ストレスで飲み歩いていたらお酒が止められなくなった。
食事のリズムが狂ったり、ストレスを食事で発散していたら
食欲に異常が現れるようになった。
仕事に行く途中の電車で心臓発作のような症状を起こし
電車に乗れなくなった
セラピラシスのサポート医師、木村真人先生に
日頃の臨床の様子をお聞きしました。
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ご相談に来られるタイミングはまちまち。
ストレスチェックの実施時期にちょうど症状が出現した方は、早期に受診され、対応も短期で済むケースが多いです。
時期的に多い印象なのは、入社後、部署変更、転勤、上司が変わった、自分と合わない人と一緒の部署になったなど、環境変化があった時。
環境変化には昇進、重要なプロジェクトを任されるなどの、嬉しい出来事もあります。
ストレス状態が1~2ヶ月続いて不眠、食欲不振、頭痛、動悸などの症状が出現して休みだしたり、内科やメンタルクリニックにかかってみようかと思って相談されることもあります。
家族の変化などが影響される方も多く、家族が闘病中、離れて暮らすご両親が困っているのに、転勤が叶えられず援助できないなどが長期のストレスになっていることもあります。
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自分のことだけではなく、家族の環境変化なども影響が大きいようです。
色々なところでストレスを感じている私たち。
早めにそのストレスに気が付くことが大切です。
高ストレスと選定された場合、できるだけ早い段階で会社に相談した方が良いに決まっていますが、なかなか踏み切れないものですよね。
メンタルに問題がありそう…
ストレスがすごい…
眠れない…
だるい…
全てが面倒くさい…
こういう状態、どのくらいの期間続いていますか?
人間の細胞のターンオーバーで良く言われることですが
90日ですべてが入れ替わると言われています。
90日、3ヶ月も悩み続けた場合、脳細胞が悩みでいっぱいになって、自力ではリフレッシュできない状況に陥っているかもしれません。
自覚症状がなくても、2~3ヶ月状況が続いているようなら、早めに身近な人に『高ストレス』であることを話してみた方が良さそうです。
とはいってもやっぱり会社でこういう相談はできない!すぐに相談できるプロにうち明けてみよう
会社では仕事に集中したい
忙しくて産業医の面談を受けている場合ではない
仕事を休めない
会社で相談して、誰かに知られるのが嫌
色々と事情があることと思います。
でも…
家に帰って夜な夜なうつ病情報を検索してしまうとか
通勤の電車の中でスマホでストレス対処法を検索してしまうとか
そんな毎日を送っていませんか?
ネットの情報は様々。
信頼できる情報ばかりではありません。
(このコラムもネット情報ですが…)
多すぎる情報に流されず、一度プロにご相談いただくのが一番の近道です。
オンラインカウンセリングにも様々なタイプがありますが、セラピラシスの最大の特徴は、医療と連携し、専門医の指導を受けながらカウンセリングを行っているところです。
深夜時間の枠も多数。会社の仕事が終わった後にご利用いただいている方も多数いらっしゃいます。
また、ご希望であれば匿名でご利用いただくことも可能です。
もし、医療機関に行こうかどうか迷っていて、一歩が踏み出せないで時間だけが過ぎているような状況であれば、一度オンラインカウンセリングを利用してみませんか。
セラピラシスのカウンセラーは、心理学のプロとして、また、専門施設での臨床経験豊富な心理士として、サポートさせていただきます。
今回は、会社の『ストレスチェック制度』について
また、『高ストレス』になった時の対処法について書いてみました。
せっかく会社が社員のために実施している『ストレスチェック制度』
有効活用して、自分自身のメンタルヘルスに役立てましょう。
毎年プリントアウトなどして記録し、推移を確認しているという方もいらっしゃるようです。
使い方は様々。
自分の事は自分が一番分からないものです。
ストレスチェック制度で自分のストレスに気が付いたら、早めに対処しましょう。